1. 今、日本経済を大きな環境変化が襲っている。日本経済のグローバル化、フロントランナー化、急速な少子高齢化、そして大きなインパクトを持つ情報革命の進展といった、変化の潮流は、大きなうねりとなって日本をも襲っている。  
  2. その意味で、我々は、これまでにない大きな試練を突きつけられ、新たな変革と挑戦を求められ、このため政府も企業も様々な変革の為のチャレンジを試みている。まさに試行錯誤を覚悟した変革のプロセスの中にある。  
  3. こうした状況下、「21世紀の明日を変えるかどうかはシニア・ナレッジ・ワーカー(SKW)をどう活かせるかにかかっている」との想いがある。彼らの知識生産性とは仕事の質であり、彼らの持つ知識が資本財となり、組織との共生関係も含めてますます重要となる一方、事業の廃止あるいは知識の重複、陳腐化などの理由により、貴重な知識を有したシニア・ナレッジ・ワーカーが有効活用されない場面も急増してきている。  
  4. こうしたことを背景に、企業の倒産、合併、リストラが進んでおり、その一方、新規産業の創出の動きも、その掛け声の割にはまだまだわが国の雇用を支えるようなダイナミックな動きにはなっていないため、国民の間には、一種の絶望感・敗北感のようなものも見受けられるようになっている。しかし、忘れてならないのは、我が国は、これまでも、そして、まぎれもなく今でも国際的にみて優れた経済国の一つであり、それを支えているのは、我が国の勤労者であることである。高齢化が進み、福祉型・環境型の社会をこれからの我が国は迎えることになるのであるが、これを社会的コストが増えるといったマイナス要因として捉えることは正しくなく、むしろ、例えば、次の二つの理由からプラス要因として捉えることが適当である。その一つは、現在の花形産業となっている情報・通信分野と並び、まったく毛色の異なる新たなビジネスチャンスの宝庫が出現するということを意味しているということである。もう一つは、高齢化が進むということは、高い能力・経験を有した人材の層を厚く有する、人材資源の宝庫となるということを意味しているということである。この研究会では、基本的にナレッジ・エキスパートの能力を活用することにより、より豊かな社会を実現していくことを目的とするが、そうした中で、例えば、  
    * 情報・通信分野のような動きが早く先の読みにくいマーケットで成長してくる企業において、高い経営能力、豊富な経験、人的ネットワークなどを備えたナレッジ・エキスパートの能力を活かせるようなシステムの構築。  
    * また、福祉型・環境型の産業は、地域に密着し、生活者重視型、サービス型の産業がその中心であり、こうした産業の担い手としてナレッジ・エキスパートを支援していくようなシステムの構築。
などが極めて重要で、緊急に対応を要する課題となっている。
 
    このため、昨年1月、我々はこれらの課題への対応策について検討を行い、具体的課題の抽出とその課題解決に向けての具体的な政策を提案することを目的とした研究会を結成した。  
  5. 本研究会は、本問題解決について関心と熱意を持ちかつボランティア的精神を持つ有志が参集し、構成された。日中の仕事終えた後、夜集り、又夏の休暇中に合宿して真剣な議論を積みかさねてきた。このため、勿論この報告書の内容は私的な作業の結果であり、メンバーの所属している組織とは無関係である。
又、内容的にはKnowledge Managementの観点からのアプローチも試みた。勿論、諸々の制度の改善の方向等に関しては、検討されるべき課題はまだまだ多い。
さらに、自由活発に議論を行ったため、この報告書の内容は必ずしも全員の一致した見解ではないこともお断りしたい。
 
  6. 雇用問題は、政府だけの問題ではない。会社もナレッジ・ワーカー自身の課題でもある。いや、政府は従来の抱え込み型の雇用政策から、新規需要を創造して雇用の流動化を高めて、より移動性の高い労働市場をつくる方向に、政策を転換しつつある。従って、官の政策変化と相まって民の側でも、真剣な挑戦を試みるべきである。官は民のそういう試みを助長する環境整備をすべきである。  
  7. 著名な経営学者のP.F.ドラッカーもその最新の著書「明日を支配するもの」(ダイアモンド社)で、日本の解決がモデルとなると述べている。すなわち、「私は日本が、終身雇用制によって実現してきた社会的な安定、コミュニティ、調和を維持しつつかつ、知識労働と知識労働者に必要な移動の自由を実現することを願っている。(中略)日本の解決が、他の国のモデルとなるであろうからである。」と明確に期待を表明しているが、この言葉はまさしく我々の希望するところでもある。  
  8. より素敵な経済社会の構築を目指して、この報告書が更なる討議と行動への刺激になり、材料として活用されることを期待したい。  
 
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