株式会社 一柳アソシエイツ

構想エネルギー21研究会

2018.01.23 更新

一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第111回勉強会を開催しました

講師 小山 堅 氏

講師 小山 堅 氏

 2018年1月18日 当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第111回勉強会の講師に、一般財団日本エネルギー経済研究所(以下「IEEJ」と言う) 常務理事・首席研究員の小山堅様をお招きし、『グローバルエネルギー動向と中東情勢の行方』とのテーマでお話しを頂きました。小山様は、1986年早稲田大学大学院経済学修士修了後、IEEJに入所され、2011年に現職に就任されています。国際エネルギー情勢の鋭い分析と的確なコメントには定評があります。

 はじめに、当面の原油価格の見通しです。
2016年平均40ドル/バレルと低位安定していましたが、年初北海ブレント原油価格が70ドルを越えました。 その要因は、①世界経済の好調や寒波襲来による石油需要増、②中東の不安定情勢の反映、③過剰マネーのリスク資産への流入、の3点です。
今後の見通しについては、この3点の要因如何でありますが、米国シェールオイル生産が今の原油価格水準で採算性を増すため今年後半には増産に向かい、需給はバランスして推移し60ドル台の踊り場状況に入ると見ています。

 続いて、LNGについての話です。LNGは環境特性が優れていて、日本でも原発事故以降、一時は全発電の5割近くを賄う重要な役割を果たしてきました。また、IEAでは『ガス黄金時代』が到来するとの見方もありました。しかし、現時点では、米国以外では黄金時代は実現していません。アジアでは、現状の石炭偏重からエネルギーの多様化が求められており、天然ガスやLNGが最も有効なオプションの一つになりつつあります。米国や豪州での大規模プロジェクトが立ち上がり、需給が緩和して2020年代前半まで買い手市場が継続すると見ています。但し、最近見られる中国での急速なガス需要の拡大や韓国・台湾などの脱原発政策によるLNG需要増加の影響には、注目する必要があるとのことです。

 更に、IEEJの長期エネルギー需給見通しです。
今後とも経済のエネルギー効率は大きく改善していきますが、世界のエネルギー需要は増え続けます。需要増加要因の2/3がアジアの非OECD諸国からのもので、中国は2040年代半ばにピークを迎え、アジア内のエネルギー市場の重心はインド・アセアンへとシフトしていきます。今の趨勢がそのまま続くとした「レファレンスシナリオ」では、増大する電力需要は主に火力発電で賄われ(約6割)、特にガスが大きく伸び、輸送用燃料と合わせて、アジアが化石燃料消費の増加を牽引します。化石燃料依存が変わらない中で、エネルギー起源CO2排出量は2050年までに34%増加します。
 
 次に、中国のエネルギー問題の課題です。3E(安定供給、環境適合、経済効率性向上)+S
(安全性)がポイントです。エネルギーの60%を輸入に依存し、そのうちの1/2が中東、1/4がアフリカからで、エネルギーは中国の弱点になります。石炭に偏った消費から生ずる環境負荷対策やエネルギー市場構造改革が求められます。更に、大規模な原発開発の安全確保が課題となります。

 また、不安定な政情が続く中東・北アフリカ地域についての解説がありました。
アラブの春やISの勃興から始まり、近時のサウジとイランの対立、サウジやUAEとカタール断交、イランの大規模テロや大規模抗議行動、サウジのムハンマド皇太子の急進的改革、トランプ大統領のエルサレムの首都承認等々、様々な問題が起きています。
これらのキーワードは、アメリカのトランプ大統領であり、同氏の見えない部分が依然として余りにも大きく、同氏の主張する「アメリカのエネルギー支配」の推進如何によっては、更なる混乱が引き起こされる懸念も大きいと見ています。

 最後に、IEEJが発表した「石油需要ピーク」分析の説明がありました。
EV、PHEV、FCV等の「ゼロエミッション自動車」の急速普及のケースによれば、石油は2030年頃にピークを迎えるとのことです。このケースでは、「ゼロエミッション自動車」の世界全体の自動車販売シェアが、2030年30%、2050年100%となる前提を置いて推計したもので、在来型のレファレンスシナリオでは急速な増加を続ける非OECDの自動車用石油消費も2030年頃から減少に転じ、2050年にはレファレンスシナリオ比で約1/3迄減少することになります。この需給緩和により、原油価格は2020年代以降下落に転じ、2050年には50ドル/バレルまで低下するとのことです。

 質疑応答では、「AIやIoTの普及による省エネ効果を織り込んだ見通し作成」、「電力化や電力安定化を織り込む見通し」、「サイバーテロへの対応」、「米国や中国の原発への取組み対応」、「石油需要を水素に転換する方策」等々についての議論で大いに盛り上がりました。
 その後、毎年恒例の新年懇親会に移りました。出席者からは、「世界各国の専門家とのダイレクトな意見交換の積み重ねをベースにした小山講師の詳細な説明は素晴らしく、課題や問題点が明瞭になった。」或いは「エネルギー問題の理解を深めるだけでなく、具体的事業経営のヒントを沢山頂いた。」などの声が多く有りました。今年もエネルギーを巡る情勢変化は激しいと思われ、当研究会でしっかり勉強して行こうと語り合いました。

講義風景
 


【小山堅講師略歴】
小山 堅 氏プロフィール用1982年3月 早稲田大学 政治経済学部 経済学科 卒業
1986年3月 早稲田大学大学院 経済学 修士修了
1986年4月 (財)日本エネルギー経済研究所入所
1995年4月 海外派遣(英国ダンディ大学、2年間)
       University of Dundee (Scotland, UK),
       Centre for Petroleum & Mineral Law & Policy PhD課程に留学
2001年6月 博士号(PhD)取得
2007年6月 理事 戦略・産業ユニット総括
2010年4月 東京大学公共政策大学院 特任教授
2011年6月 常務理事 首席研究員 戦略研究ユニット担任(現職)
2013年4月 東京大学公共政策大学院 客員教授
2017年4月 東京工業大学科学技術創成研究院 特任教授