株式会社 一柳アソシエイツ

構想エネルギー21研究会

2018.05.22 更新

一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第113回勉強会を開催しました

沖 大幹 氏

沖 大幹 氏

 2018年5月16日 当社社長の一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第113回勉強会の講師に東京大学特別参与・教授/国連大学上級副学長の 沖大幹様をお招きし『水リスクと持続可能な開発』とのテーマで、お話し頂きました。専門の水分野に関してグローバルに活躍されている様子と共に環境・社会・ガバナンスの取組みを重視するESG投資への関心の高まりにより、近年継続的取組みが増加している企業のSDGs(持続可能な開発の為に国際社会が2030年までに達成すべき目標)について詳しく説明して頂きました。

 はじめに、今年1月のダボス会議で行われた「グローバルリスク報告書2018」に触れました。世界のリーダーは今後の安定的経済発展の阻害要因として、極端な気象、自然災害、気候変動対策失敗などと共に水危機も含めています。現実の主な自然災害による死者数及び被害額の約6割を洪水、ストーム、渇水などの水関係が占めています。更に、タイや米国での企業の被害額では現実の物的資産損害よりもサプライチェーン等の棄損による機会損失が上回っています。

 それでは、なぜ水不足が生じるのか?
水の価格が非常に安いということに起因します。各1トン当たり飲み水=1ドル、工業用水=10セント、農業用水=2,3セントの価格水準です。従って余りにも安価なので、石油とは異なって運搬出来ないローカルな資源であると言われています。一方、一定地域に利用可能な水量以上に人口が集まってしまうことから水不足が生じることになります。

 温暖化については、変化が大きくなっていることを問題視し、テロと移民問題も気候変動の影響であるとの説明がありました。即ち、シリアでは3年連続で大干ばつが発生し農民の都市への流入が増大し、これが欧州への移民の増大に繋がりテロの多発に結び付いたとのことです。

 次に産業界及び企業にとって、持続可能な発展のためにはSDGs(Sustainable Development Goals)の取組みが不可欠との説明がありました。
SDGsとは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され,発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサルなものになっています。

 SDGsは国際目標ではありますが、グローバル経済下の世界では、どこかの国や企業の一人勝ちはなく、グローバル企業になればなるほど公的責任が生じる。SDGsは21世紀の国際的な大義名分であり、企業も観客から選手になりルール策定に参加してほしい。
今日参加された方々が、水に関する悲観論と楽観論の適切なバランス感覚を保持し、グローバルリスクのリスク管理の重要性を良く理解され、社会・経済・環境の持続的可能性の構築に主体的に参画して頂きたいと、結ばれました。
会議風景
 質疑応答では、「食糧危機発生の可能性」「グローバル水ビジネスの展開」「水道等の公共インフラの維持管理」等々についての議論で大いに盛り上がりました。
その後、ワインを飲みながら懇談会に移りました。出席者からは「大学教授の枠を外して、これだけ国際会議等で積極的に自説を披露される方を見たことがない。今後とも大いに活躍して欲しい。」「今までSDGsは、国際目標とばかり考えていたが、企業にとっても順守すべき項目が多く、今後の経営課題に取り入れたい。それにしても、大学教授から『三方良しの精神』が聞けたのには驚いた。」などの声を聞きしました。


【沖大幹先生ご略歴】
東京大学工学部卒業、博士(工学、1993年、東京大学)。東京大学生産技術研究所助教授、文部科学省大学共同利用機関・総合地球環境学研究所助教授などを経て、2006年東京大学教授。2016年10月より国連大学上級副学長。現在も東京大学総長特別参与、教授を兼任。
沖大幹氏プロフィール用
地球規模の水文学および世界の水資源の持続可能性を研究。気候変動に関わる政府間パネル(IPCC)第5次報告書統括執筆責任者、国土審議会委員ほかを務める。生態学琵琶湖賞、日経地球環境技術賞、日本学士院学術奨励賞など表彰多数。水文学部門で日本人初のアメリカ地球物理学連合(AGU)フェロー(2014年)。書籍に『水の未来 ─ グローバルリスクと日本 』(岩波新書、2016年)、『水危機 ほんとうの話』(新潮選書、2012年)、『水の世界地図第2版』(監訳、丸善出版、2011年)、『東大教授』(新潮新書、2014年)など。