株式会社 一柳アソシエイツ

構想エネルギー21研究会

2019.05.22 更新

一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第119回勉強会を開催しました

佐野 利男 氏

佐野 利男 氏

 2019年5月16日 当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第119回勉強会を開催しました。今回は内閣府原子力委員会委員/前軍縮会議日本政府代表部特命全権大使 佐野利男様に登壇頂き、「最近の核軍縮と核不拡散を巡る諸問題」とのテーマでお話し頂きました。
  まず核兵器の現状についてお話し頂きました。NTPの核兵器国は米国、ロシア、英国、フランス、中国の5か国です。インド、パキスタン、北朝鮮の3か国が事実上核兵器を保有しています。核保有があいまいな国がイスラエルです。
核兵器保有総数は1945年の広島、長崎の原爆投下の後、米ソ冷戦の激化を経て1986年のピーク時には7万を超えていましたが、その後各種の核軍縮交渉の進展により2018年には約1万4千となっています。
 
 核軍縮の現状について、戦後最大の転換点が起きているとの認識で、安全保障と核軍縮の議論は一体不可分であり、INF(中距離核戦力全廃条約)及び新START(新戦略核兵器削減条約)並びにNPT(核兵器不拡散条約)ついて言及されました。
INFは戦後の核軍縮に大いに寄与したものでありますが、条約当事国でない中国やイラン等の国々による弾道ミサイルの開発が続いており、米露を取り囲む安全保障環境に変化があります。今回の米露の条約脱退により、2019年8月に失効します。新STARTは米露間の核弾頭やICBMなどの運搬手段の制限・削減に関する条約で2011年2月に発効し、次の合意に代替されない限り10年間有効ですが、その期限も2021年2月に到来しその行方も注目されます。更に、NPTは1995年に無期限延長が合意され恒久条約となっています。現在の締約国は191か国・地域で、非締約国はインド、パキスタン、イスラエル、南スーダンの4か国です。条約の3つの目的は、・核軍縮(締約国により誠実に軍縮交渉を行う義務を規定)、・核不拡散(核兵器国以外への核兵器の拡散防止)、・原子力の平和的利用です。
 
 核兵器は無くせるかとのテーマについての言及がありました。
核兵器の保有については、常に事故が起きる可能性は排除できず、最終的に核廃絶を追求すべきだが、それに向けて現状では以下の様々な核抑止力を補完する対策を推進しつつ、国家の安全保障と共に人類の安全保障を実現することが重要。
・ヨーロッパ連合が実現したように自由、民主主義等の価値を共有する国々の間で信頼醸成を推進すること。
・現在116か国が非核地帯条約に入っているが、これを現実的な形で推進すること。
・強靭なMD(Missile Defense)網
・国際的核軍縮検証機関の必要性

質疑応答では、「核軍縮や廃絶の実現に向けてのキーファクターは何か」、「プルトニウムを大量保有する日本が核を持つ可能性」、「日本を巡る近隣諸国の核兵器の脅威」などについての率直な意見交換で大いに盛り上がりました。
 その後の懇談会の出席者からは、「今まで核軍縮や核不拡散について良く分からなかったが、今回様々な条約や交渉について、時間軸と共にグローバルに俯瞰する諸々の説明を聞き理解を深めることが出来ました。」或いは「ニューヨーク国連総会やジュネーブ軍縮会議の議論の様子を詳しく聞けて関係者のご苦労が分かりました。国家の安全保障と共に人類の安全保障を実現する核廃絶に向けて大いに頑張って頂きたい。」などの声が有りました。

2019.05.16会議風景


佐野利男プロフィール写真【講師ご略歴】
○ 佐野利男様
(学歴)
昭和52年 3月 東京大学法学部卒業
(職歴)
昭和52年 4月 外務省入省(米国留学)
59年 8月 国際エネルギー機関(IEA)
平成 6年 1月 国際連合日本政府代表部参事官
9年 2月 外務省経済局国際エネルギー課長
10年 4月 同 総合外交政策局軍備管理軍縮課長
13年 1月 軍縮会議日本政府代表部公使
18年 8月 外務省大臣官房総括審議官
20年 7月 同 総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長[大使]
22年 8月 在デンマーク大使館 特命全権大使
25年 7月 軍縮会議日本政府代表部 特命全権大使
29年 2月 外務省参与(核兵器用核分裂性物質生産禁止条約に関するハ イレベル専門家準備グループメンバー)(~8月)
29年12月 内閣府原子力委員会委員(常勤)(現職)