株式会社 一柳アソシエイツ

特別講座

2019.10.03 更新

第104回一柳アソシエイツ特別講座を開催しました

2019年9月30日 第104回一柳アソシエイツ特別講座を開催しました。

津上 俊哉 氏

津上 俊哉 氏

 今回の特別講座は、現代中国研究家で公益財団法人日本国際問題研究所客員研究員の津上俊哉氏をお迎えし、『中国経済と米中関係の行方』と題して、ご講演を頂きました。
 津上氏は、1957年生まれ、1980年東京大学法学部を卒業、同年通商産業省(現・経済産業省)に入省。通商政策局国際経済部勤務など経て、外務省に出向・在中国日本大使館経済部参事官。その後、通商政策局北東アジア課長などを歴任して2004年退官。同年、東亜キャピタル株式会社社長に就任、日中専門の投資ファンドを運営、2012年からは「中国ウォッチャー」として本格的に活動。現在は、現代中国研究家、公益財団法人日本国際問題研究所客員研究員として、中国とアメリカを煩瑣に訪れ、豊富なネットワークを生かした鋭い分析とわかりやすい解説で、注目を浴び、テレビや雑誌などにもたびたび登場されています。一柳の経産省の後輩で、一緒に仕事をしている仲間です。
 津上氏は、まず、中国における民営主導によるスマホ、AI、EVなどに代表されるニューエコノミーの躍進状況を説明され、また、その一方で中国の置かれている経済の三重苦(①投資バブルによるバランスシート調整、②民営企業家の苦難、③米中貿易戦争)について語られました。中国では2009年から昨年までに累計7,175兆円という多額の投資がなされ、これが中国の高い成長率維持に貢献していたこと、しかし投資効率が悪化した結果債務が大きく膨張し、現在はその肥大化したバランスシート調整期に入っていること、その調整により地方などにおいては様々な綻びが生じ始めていることなどについてデータを用いながら詳細に解説されました。また、負債膨張による原因の多くが国有企業にある一方で、金融引き締めのターゲットが結果として民営企業となっていること、その資金的救済の観点から民営企業が国有企業に買収される可能性があることなど、中国経済への貢献度が高い民営企業の苦難についてご説明いただきました。そして、このような二つの経済問題を抱える中、米中貿易戦争が勃発し、中国にとってこの貿易戦争がまさに「泣きっ面に蜂」の事象であると語られました。
 また、財政悪化、少子高齢化、年金債務などの観点から中国経済の行く末を日本の状況と比較しながらご説明いただくとともに、米国との貿易戦争の行方についても今までの米国の強硬姿勢、とりわけHuawei排除の急激な展開などを振り返りながら、両国とも背後の強硬派の存在が交渉を難しくしている、と説明されました。加えて中国の優秀な頭脳、政府の強大な経済力からICT分野で米国をしのぐ可能性があるとしつつも、一党独裁体制による過剰な介入により民営企業の活力が失われる可能性もあり、中国が世界の覇権を握るかどうかの今後予測は非常に難しいとも述べられました。
 最後に超大国である米国も中国も政治経済が大きく振れる振り子のようなものであり、その振り子に他国は振り回されることは避けられないが、今までの歴史からいつか逆に振れる可能性は大いにあるため、双方の状況を引き続き注視していくことが極めて重要である、と締めくくられました。
 会場からの質疑にも丁寧に答えられましたが、聴講者からは、「頭の中が整理できた」、「備えをするうえで参考になった」、などの声をいただきました。
2019.09.30講義風景