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一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第135回勉強会を開催しました

2021.10.29 更新

岩田 修一 氏

 2021年10月26日当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第135回勉強会を開催しました。
 今回は東京大学名誉教授 岩田修一様に登壇頂き、「環境とデータの時代における創造性-核エネルギー学の新生に向けて」とのテーマでお話し頂きました。

 はじめに、講師の現場が大事で現物に触ることが大切との想いから、原子炉で核燃料を封入して核燃料棒とするための被覆管や複数の核燃料棒を束ねるためのスペーサーの現物を参加者が実際に手に取ることを体験しました。
 本日の話題提供の目的は、「原子力、核、環境」という極めて重い問題について、新たな展望を拓くための創造性、組織論、情報論、価値論、実践論の視点で俯瞰を試み、環境とデータの時代における学術としての「核エネルギー学」の使命を提案したいと話されました。

 次に、人類が被った大災害のうち1755年リスボン大地震及び津波に触れ、この大災害を契機に西欧社会は神に頼ることから理性の大切さに目覚めたとの説明がありました。
原子力の時代に入り、1945年広島長崎原爆投下、1979年スリーマイル島原発事故(TMI事故)、1986年チェルノブイリ原発事故、2011年福島第1原発事故などについても、その対応の巧拙に言及されました。TMI事故では、現地に入った緊急時対応チームに大統領を超える権限を付与したことを高く評価しました。また、2011年東日本大震災でも、JR新幹線は設計段階からあらゆる事態を想定して対応策を施したことにより、地震発生後数秒以内に全線で安全に停車できたことを評価し、如何に設計段階からの基礎技術の確立が大事であるかを強調しました。

 これまでの日本における「原子力と核」に関する様々な失敗を踏まえ、即ち、
・エネルギー供給(送電網、水密、非常用ディーゼル)
・非常事態対応の失敗と信頼喪失
・ネットワークの破壊(地域社会、サプライチェーン、人材と情報)
・ゆとりと柔軟性並びに生命力の喪失
未来に向かって新たな展望を切り拓くための糸口を発見し、次の時代に繋がるアクティビティを確立したいと結ばれました。

 今回の参加者からは、「全ての事柄について基礎からの本質的な処を純化してこそ新しいものが出来る、との講師の言葉は極めて重たい。」或いは「原子力学について次の時代に繋がるアクティビティを確立したいとの講師の想いを是非実現して欲しい。」などの声が有りました。

ソーシャルディスタンス会場とオンライン受講を併用した講義風景

【講師ご略歴】

○岩田修一先生(1948.1.29生)

人工物から環境にいたる人間系の特性を陽に反映しなければならない難しい課題の解決について、科学技術データのオープンアクセスの実現とデータ科学を基軸にした集合知の活用による新たな問題解決方策を提案。東京大学名誉教授、日本工学アカデミー会員、エコエチカ研究所主筆、MPDS Project Coordinator、MGE Chief Scientist、山梨大学客員教授他。専門分野としては、データ科学、設計科学、核燃料工学、材料設計学、人工物工学、環境学。
経歴としては、CODATA(国際科学データ委員会) President、Editor-in-Chief, Data Science Journal/CODATA、Landscape Frontier International Symposium議長。東京大学教授、事業構想大学院大学教授、Fachinformationszentrum客員研究員他。
国連情報社会サミット開催と連動して2件のScience Editorial(Jane Lubchenco and Shuichi Iwata、Editorial: Science and the Information Society、Science Vol.301, p.1443,2003;Shuichi Iwata and Robert S. Chen 、Editorial: Science and the Digital Divide、Science Vol.310, p.405,2005)を発表、同サミット全体講演でCODATA Presidentとして世界の学術分野を代表して、オープンデータに関する活動総括を行った。
ソフトフェライト開発へと応用され日本金属学会論文賞、分散型材料設計システムで科学技術情報振興賞受賞、設計における求解手法のバイオ分野への応用でGIW 2003 Best Paper Awardを受賞。
物質材料に関するデータベースに関する活動はmpds.ioとしてグローバルなde facto standardsの一つの拠点を形成することに貢献したが https://arxiv.org/abs/2105.12784
材料→人工物→原子力・エネルギー・環境→社会という循環型社会を形成するための骨格となる対象の設計論を考察する過程の途上で発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故を重く受け止めて、「人間とは何か?」という原点に遡及した問いから思索中。多くの賢者が難しく考えて失敗した課題なので、別のアプローチを探すため以下の覚書を作成した段階にある。
https://sentankyo.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=54&item_no=1&page_id=13&block_id=21

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