構想エネルギー21研究会エネルギー産業構造の変革期が訪れようとしています

  1. 構想エネルギー21研究会
  2. 役員
  3. 勉強会・海外視察

一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第138回勉強会を開催しました

2022.03.28 更新

小圷一久氏

 2022年3月23日 当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第138回勉強会を開催しました。今回は、環境省地球環境局 地球温暖化対策課市場メカニズム室国際企画官 小圷一久様を講師にお迎えし、『カーボンニュートラルに向けた脱炭素市場の構築:パリ協定6条とJCM(二国間クレジット制度)の役割』とのテーマでお話し頂きました。

 パリ協定では、全ての国が自国の温室効果ガスの排出削減目標等を定めることが規定されています。その排出削減を効果的に進めるため、パリ協定6条には、排出を減らした温暖化ガスの量を国際的に移転し、各国が定める排出削減目標の達成に活用できる「市場メカニズム」が規定されています。はじめに、この6条により期待される効果についての説明がありました。即ち、各国が提出した削減目標では120ヵ国以上が活用に言及しており、6条の実施により2030年までに世界全体で最大90億トンCO2と2018年の全世界のCO2排出量の約3割に相当する追加的な排出削減が可能になるとのことです。

 2021年11月英国グラスゴーで開催されたCOP26では、小圷氏などの日本の政府交渉チームの多大な貢献により、このパリ協定6条の実施ルールについて合意されました。この合意形成過程について詳しい説明がありましたが、ポイントは、二重計上防止ルールについての日本が提案した「承認案」が採択されたことで、国際間の協定でここまで深く関与して成果を挙げた日本人は極めて珍しいと言えます。小圷氏は、1997年に採択された京都議定書を契機として気候変動の分野に関与されていて、これまでに約20年この分野に携わっており、各国の関係者からその活躍振りが広く知られております。

 日本ではこれまで、排出量取引のクレジットの分類では、2013年から政府が主体となるJCM(Joint Crediting Mechanism:二国間クレジット制度)を世界に先駆けて実施してきており、ベトナムでのアモルファス高効率変圧器の隣国を含めた展開やカンボジアでのLED街路灯ネットワークを軸としたスマートシティへの展開などの成功例があります。クレジット制度はあくまでも入り口で、その先の日本技術の導入、ビジネス展開が本丸で、何兆円規模の脱炭素市場を作るきっかけとしてクレジット制度を活用していくことが重要です。

 今後の展開として、COP26において、パリ協定6条ルールの大枠が合意され、市場メカニズムを活用した世界での排出削減が進展することが期待されています。
 6条ルール交渉をリードし、世界に先駆けてJCMを実施してきた我が国として、以下の3つのアクションを通じて、世界の脱炭素化に大いに貢献したいと結ばれました。
 ・JCMのパートナー国の拡大と、国際機関と連携した案件形成・実施の強化
 ・民間資金を中心としたJCMの拡大
 ・市場メカニズムの世界的拡大への貢献

 質疑応答では、「本件クレジット制度の詳細に関する意見交換」や「民間企業を中心とした技術及び資金によるプロジェクト形成に向けた検討」などで盛り上がりました。

 今回の出席者からは、「自社のカーボンニュートラルの目標達成に向けてこのクレジット制度の活用を大いに検討したい。」或いは「小圷講師には、引続き温暖化防止の国際ルール作りに活躍して欲しい。更に、各種の国際的ルールメイキングに参画出来るような日本人を一人でも増やして欲しい。」などの声が有りました。

ソーシャルディスタンス会場とオンライン受講

【講師ご略歴】

○ 小圷 一久 (こあくつ かずひさ)様

米デラウエア大学、都市問題と公共政策大学院
環境エネルギー政策修士。

パリ協定の市場メカニズム(6条)交渉官として国連気候変動枠組条約第22回締約国会合COP22(2016年)より日本政府代表として国際交渉を担当。京都議定書の下でのクリーン開発メカニズム(CDM)や二国間クレジット制度(JCM)の経験などを基に定量分析やテキスト案の提示を行う。英国グラスゴーにて開催されたCOP26(2021年)において、先進国及び途上国の間を繋ぐ「日本提案」を調整し、パリ協定6条ルールの合意に大きく貢献。

二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism; JCM)について環境省による資金支援事業の実施及び政策立案・政府内及び国際調整を担当。JCMの合同委員会日本側メンバーを務める。JCMの普及啓発や国際機関との連携を促進。世界銀行及び国連工業開発機関(UNIDO)とJCM連携に係る協力覚書を締結するなど、JCMの国際的な展開を促進。

IGESにおいては、京都議定書の下での市場メカニズムである、クリーン開発メカニズム(CDM)及びJCMの実施に必要な途上国向けの能力構築事業に従事。アジア地域の国を中心に、世界各国の政府職員や民間企業向けの人材育成活動を行う。途上国における市場メカニズムの政策実施や温室効果ガス排出削減事業の形成方法や温室効果ガスの排出削減量を算定するための方法論作成やデータ計測や検証に係る専門的技術の理解習得などを支援。

主な著作物
小圷他(2016年)『二国間クレジット制度(JCM)を通じたパリ協定第6条の運用』:市場メカニズムと国別目標(NDCs)への活用に向けた主要課題、地球環境戦略研究機関(IGES)気候変動とエネルギー領域、IGESディスカッション・ペーパー、2016年5月
小圷一久(2015)「図解 新しい市場メカニズム」
小圷一久、水野勇史(2009年)『クリーン開発メカニズム(CDM)の仕組みと現状』、廃棄物資源循環学会誌、Vol.20, No.4, pp. 149-157, 2009

一覧へ戻る