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一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第124回勉強会を開催しました

2020.01.26 更新

長野 浩司 氏

 2020年1月21日 当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第124回勉強会を開催しました。今回は、一般財団法人 電力中央研究所 研究参事 社会経済研究所 所長 長野浩司様を講師にお迎えし、『2050年にCO2排出量80%減を達成するエネルギー電⼒需給の全体像はどのようなものか?』とのテーマ-でお話し頂きました。

冒頭、先週のNEA会議参加のためのパリ出張のトピックスの披露がありました。OECD傘下の2つのエネルギー機関のIEA(International Energy Agency )とNEA(Nuclear Energy Agency)が共同で5年毎に発表している「発電コスト評価」の今年2020年のレポートでは、『原発の稼働延長が、石炭火力を含め他の電源よりも最も安い電源である』と発表する予定とのことです。なお、世界各国の原発の最長運転期間は、日本の60年に対し米国は80年となっており、その他期間を定めていない国もあります。

 本題に入って、今回のテーマの研究発表の背景と目的についての説明が有りました。2016年3月に閣議決定された地球温暖化対策計画では「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」とされ、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)等の新技術の活用が示されていますが、経済や新技術を含むエネルギー需給の全体像についての定量的な検討は不十分であります。そこで、再生可能エネルギーが最大規模で導入されるとした場合における、2050年のCO2排出量80%減を達成するエネルギー・電力需給の全体像および選択肢を示しているとのことです。

 様々な前提をおいて導き出された結論と政策的な含意は以下の通りです。
(1)既存のゼロエミッション技術を活用し80%減を達成する姿は、需給見通しを上回る省エネを見込み、最大規模の再エネや蓄電池を導入したとしても、原発の新増設は不可欠であります。そこで、2050年という射程を考えると、原発を含めた各種電源の選択については喫緊の判断が必要であります。
(2)原発の新増設が無い場合の選択肢とその際の影響は、CCUSを活用する場合、仮に、産業界からの回収や貯留・利用を実施すると追加的な負担が生じ、産業の国際競争力に影響が及ぶ可能性があります。更に、メタネーションを大規模に利用する場合、水素の輸入もしくは水素製造のために用いられるゼロエミッション電源の上積みが必要です。或は、経済成長を抑えることも選択肢の一つとなりえます。

 質疑応答では、“排出権取引の可能性、国産エネルギーのみでの電力部門のCO2ゼロ実現の可能性、南海トラフ地震等の大規模災害発生の際のCO2問題への影響、欧州の再エネのみの電源化実現の可能性、政府の長期見通しの変更可能性のタイミングと方策” 等々についての率直な意見交換で大いに盛り上がりました。

 その後恒例の新年懇談会に移り、出席者からは「長野講師の研究者としての矜持を堅持した説明をお聞きして、CO2排出削減目標の実現は本当に困難が多いと良く理解出来ました。」或いは「この研究会には、電力・ガス事業者のほか様々な企業や団体の方々が参加されており、多様な意見が聞けて大いに参考になります。今年もしっかり勉強していきたい。」などの声がありました。

【講師ご略歴】
〇長野 浩司(ながの こうじ)様
一般財団法人 電力中央研究所 研究参事
社会経済研究所 所長 
日本原子力学会、エネルギー・資源学会 所属
工学博士
1985年 東京大学工学部原子力工学科卒
1987年 東京大学大学院工学系研究科原子力工学専攻修士課程修了
1987年 電力中央研究所 入所(経済研究所経済部エネルギー研究室)
1997年 社会経済研究所 主任研究員
2003年3月 博士号取得(工学、東京大学)
2004年7月 社会経済研究所 上席研究員
2014年7月 社会経済研究所 副所長 エネルギー技術評価領域リーダー 副研究参事
2015年4月 社会経済研究所 副所長 副研究参事
2015年6月~社会経済研究所 所長 副研究参事
2016年7月~社会経済研究所 研究参事 所長

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