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一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第146回勉強会を開催しました

2023.05.23 更新

田中 伸男氏

 2023年5月18日 当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第146回勉強会を開催しました。今回は世界エネルギー危機と脱炭素:水素と原子力の役割』と題しまして、代表一柳の通商産業省の後輩で、一柳もかつて勤務していた国際エネルギー機関(IEA)の事務局長をされました田中伸男様にお話しを頂きました。

 はじめに、田中様が2009年9月から4年間事務局長を務めたIEAが定期的に発表するレポートがグローバルな政治経済情勢に様々な影響を及ぼしてきた説明がありました。最近では、2021年8月に2050年ネットゼロ実現へ投資拡大の提言をしました。このIEAショック(ネットゼロが2050年なら石油需要は既にピークアウトし、ガスも2025年にはピークに)が、ロシアのプーチン大統領をして早期にウクライナ侵攻に踏み切らせたかもしれないとのことです。

 次に、現在の世界エネルギー危機のもとにおける脱炭素についての説明です。
脱炭素の下で競争力をどう強化するかがグリーン産業政策で、需要サイドがグリーンなエネルギー源を求める時代になっています。日本がこの危機の時代に勝者となるにはクリーン水素と原子力が必須であります。かつてアルミ産業が日本で衰退したと同じように、このままでは鉄鋼業も日本から退出してしまいます。最近のIEAレポートでは、エネルギー高密度産業への投資は今後並外れたクリーン電力が存在するかCCUSが可能な地域に集中するとのことです。これからはクリーン水素のサプライチェーン作りがポイントになります。

 更に、様々な革新炉開発が提唱されている原子力についての説明です。
原子力は今のままの大型軽水炉路線では救世主になれず、原子炉の建設コスト低下は大型化ではなく標準化によってなされます。従って、今後の原子力発電は、①リスクミニマム、②より現実的な高レベル廃棄物処理、③核不拡散への貢献などの3つの条件を満たす、従来とは非連続なものでなければならないとしています。具体的には、金属燃料高速炉と乾式再処理サイクルのシステムを推奨しています。更には、日本の原子力能力向上と中国を牽制するためにAUKUSに参加し原子力潜水艦を保有すべきではないかと提案しております。

 質疑応答では、「エネルギー問題におけるメインプレーヤーでない原子力の在り方」、「日本の原子力について論理で議論せず感性で判断するリーダーの存在」、「新しい原子力の開発システム」、「人災といえる福島のケジメについて」などについての率直な意見交換で盛り上がりました。

 今回の出席者からは、「田中講師のエネルギッシュな説明や応答振りに感銘を受けました。これからも多彩な人脈の国際的ネットワークも活用され、我が国の原子力を含めたエネルギーの安定供給ついて大いに議論を深めて頂きたい。」或いは「中国をはじめ多くの国が原発を増設するなか、国家の安全保障の観点から原子力能力を持つべきであり、新型の原発の建設に大いに期待します。」などの声がありました。

また、終了後の懇談会では、ワインを飲みながらのエネルギーをはじめ多方面の話題で会話を楽しみました。

【講師ご略歴】
田中 伸男(たなか のぶお) 様                 
・最終学歴
1972年(昭和47年)3月  東京大学経済学部 卒業
1979年5月 ケースウエスタンリザーブ大学MBA (米国オハイオ州クリーブランド)
・職 歴
1973年(昭和47年)4月  通商産業省(現経済産業省)入省
1991年(平成3年)10月  経済協力開発機構(OECD)科学技術工業局長
1995年(平成7年) 6月   通商産業省産業政策局 産業資金課長
1997年(平成9年) 6月    通商産業省通商政策局 総務課長
1998年(平成10年)6月  外務省 在アメリカ合衆国日本大使館公使
2000年(平成12年)6月  独立行政法人経済産業研究所 副所長
2002年(平成14年)1月  経済産業省通商政策局 通商機構部長
2004年(平成16年)7月  経済協力機構(OECD)科学技術産業局長
2007年(平成19年)9月  国際エネルギー機関(IEA)事務局長
2011年(平成23年)9月  日本エネルギー経済研究所 特別顧問
2012年(平成24年)6月  帝人株式会社 監査役(退任)
2013年(平成25年)4月  東京大学公共政策大学院教授(現客員教授)
2013年(平成25年)6月  イノテック株式会社 社外監査役(現任)
2015年(平成27年)4月  公益財団法人 笹川平和財団理事長、2017年 会長(退任)
2015年(平成27年)6月  千代田化工建設株式会社 社外取締役(退任)
2020年(令和2年) 6月  エアリキッドジャパン シニアエグゼクティブアドバイザー(現任)
            タナカグローバル株式会社 CEO(現任)
2022年(令和4年)9月   株式会社JERA Global Advisory Expert(現任)
2021年春の叙勲で瑞宝重光

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