一志会 2010年10月に発足した限定メンバーによる
新しい形のコミュニティ

「一志会」第59回の例会が開催されました。

2020.10.27 更新

森川 博之 氏

 一志会は、「公の精神」のもとに積極的に社会的責任を果たそうとの想いを共有する大企業経営幹部の「コミュニティー」ですが、10月21日に、コロナウイルス対策に万全を期して、従来とは大きく異なるやり方で、第59回例会を開催しました。
 ゲストとして森川博之氏(東京大学大学院教授)をお迎えして、「ニューノーマル時代におけるデジタル変革への向き合い方」と題したご講話をいただきました。

 森川氏は1965年生まれ、1992年東京大学大学院工学系研究科博士課程を修了(工学博士)、 以後東京大学での研究一筋に、2006年東京大学大学院工学系研究科教授(現職)。≪ビックデータ時代の情報ネットワーク社会はどうあるべきか≫、≪情報通信技術はどのように社会を変えるのか≫という課題に対して明確な指針を与えることを目指し、IoT、M2M(機械間通信)、ビックデータ、センサネットワーク、無線通信システム、情報社会デザインなど、幅広く研究されています。
また、情報通信分野で、総務省情報通信審議会部会長等政府関係の審議会委員や新世代IoT/M2Mコンソーシアム会長、OECDデジタル経済政策委員会副議長なども務め、研究成果に対して数多くの受賞もされておられます。
 去る8月には、一柳のテレビ番組にもご出演いただき、わかりやすいお話で好評を博しました。
 近著としては、「データ・ドリブン・エコノミー」(2019年4月、ダイヤモンド社)、「5G 次世代移動通信規格の可能性」(2020年4月、岩波新書)があります。

 森川氏は、まず現状を、デジタル化が進行する中、コロナ感染が重なっていることで、社 会観、世界観が大きく変化していると説明されたうえで、過去においても、ペスト流行を因として人口減少、技術革新、医療・公衆衛生、教育など広い分野に、長い時間をかけて影響を及ぼしたこと、蒸気機関の発明による鉄道の出現が、その後、様々な新産業の創出につながったことなどの事例を挙げて、一つの事象が大きな変革をもたらすことを強調されました。
 今、デジタル化といわれているが、まだその序の口にあり、今後、急速に社会の変革が進むことになるが、この流れを上手く取り込むことにより生産性を向上させ、新たな価値を創出することが可能である。デジタル化というと、直ぐにビックデータやAIなどと結び付けがちであるが、これらはあくまでも≪ツール≫である。ポイントは、例えば業務プロセスの中で、見逃されているアナログプロセスを見つけてデジタル化することで改革につなげることである。この場合、ちょっとした≪気づき≫が大切となると、事例を挙げながら指摘されるとともに、プロジェクトなどの組織も多様な人材で構成されることが望ましいと話されました。
 また、今話題の「5G」についても、まだ初期的な導入段階で、≪実証実験をしてもビジネ スになるようなものが見当たらない≫などという冷めた声があるが、IoT時代のICT基盤であり、これまでの3G、4Gがそうであったように10年単位で急速に進化するものであるので、10年後を見据えて、≪まずは土俵にあがること≫が肝要であるとされ、ウォルマートやNTTドコモアグリガール等の内外の参考となる事例を紹介されました。
 最後に、デジタル変革が、≪パイを奪い合うのではなくパイを広げる≫、≪ステークホルダー全体を考える利他と共感≫を目指すものとなってほしい、と結ばれました。
 質疑では、社内のデジタル改革意識をまとめていくことでの悩みや、≪利他の取組み≫の成功事例などについて、率直なコメントをされて、会員からは、「身近なものと感じることができた」、「デジタル化の本質について理解できた」などの声をいただきました。

 この後、今回、初参加の赤尾・資生堂ジャパン取締役常務、及び吉田・ミスミグループ本社常務執行役員から自己紹介の挨拶、そして伊藤・西日本電信電話代表取締役副社長から退会挨拶があり、続いて小沼・東京証券取引所取締役専務執行役員、馬場・大日本住友製薬常務執行役員、梅田・住宅あんしん保証代表取締役社長、島・島精機製作所代表取締役社長、浦川・パロマ専務取締役からも近況報告が行われました。 今回も、交流時間が足りないほどの盛り上がりの中、予定の時刻となり、次回例会での再会を約して、閉会となりました。

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